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はなとぶんの時間

【ふたりといた時間】第46話:腕の中で眠るように

私はそっと、ぶんを抱き上げた。痩せた身体は、まるで羽のように軽かった。それでも、確かに生きている温もりが腕の中にあった。ぶんの呼吸が、少しずつ浅くなっていった。腕の中で右に、左にと動かしていた体が、やがて止まり小さな胸が、かすかに上下するの...
はなとぶんの時間

【ふたりといた時間】第45話:もがく体、でも声はない

ぶんは、落ち着く場所を探すように、押し入れやテント、こたつの中へと、あちこちを移動していた。今思えば、それは小さな身体で必死に「少しでも楽な場所」を探していたのだろう。ある朝、目を覚ましてぶんを探した。『ぶん、どこだ?』部屋の中を見回しても...
はなとぶんの時間

【ふたりといた時間】第44話:最後に飲んだ水

お風呂の蛇口から、ぬるま湯がとろとろと落ちていく音。ぶんは、その水が好きだった。冷たすぎず、熱すぎず。ちょうどよくあたたかく、少し鉄分の味がするそのお湯を、ぶんはよく飲んでいた。その日。もしかしたら、ぶんが水を飲むかもしれない——そんな小さ...
はなとぶんの時間

【ふたりといた時間】第43話:ぶんの、がんばり

テントの奥で、ぶんはじっと丸くなっていた。何度も声をかけたけれど、返事はなかった。「ぶん。点滴の時間だよ。……楽になるから」そう言っても、ぶんは動かない。目を閉じたまま、気配だけがそこにある。私と離れてから、ぶんは少しずつ食べなくなった。食...