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はなとぶんの時間

【ふたりといた時間】第44話:最後に飲んだ水

お風呂の蛇口から、ぬるま湯がとろとろと落ちていく音。ぶんは、その水が好きだった。冷たすぎず、熱すぎず。ちょうどよくあたたかく、少し鉄分の味がするそのお湯を、ぶんはよく飲んでいた。その日。もしかしたら、ぶんが水を飲むかもしれない——そんな小さ...
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【ふたりといた時間】第43話:ぶんの、がんばり

テントの奥で、ぶんはじっと丸くなっていた。何度も声をかけたけれど、返事はなかった。「ぶん。点滴の時間だよ。……楽になるから」そう言っても、ぶんは動かない。目を閉じたまま、気配だけがそこにある。私と離れてから、ぶんは少しずつ食べなくなった。食...
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【ふたりといた時間】第42話:ぶんの静かな日々

ぶんのいない朝。家の中は、いっそう静かだった。ソファに毛玉は落ちていない。押し入れを開けても、ぬくもりはどこにも残っていなかった。——そこに、はなもぶんはいないのだと、改めて思い知らされる。私は、週に1度、ぶんのいる亜希子さんの家へ通うよう...
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【ふたりといた時間】第41話:離れても、そばに

ぶんは、あれからもずっと、静かだった。いつものようにソファで丸くなり、押入れにこもって昼寝をし、ごはんの時間には「にゃあ」と小さな声で私を呼んだ。ぶんとふたりの暮らしにも、少しずつリズムが生まれていた。確かに“ひとり”になったはずなのに、そ...